目次事例集超音波警報機(2)


超音波警報機 (2) 回路説明

今回の回路は警報検出回路以外は超音波検出ユニット(1)の回路と同じです。警報検出回路以外の回路説明は以下の項目でリンクしている超音波検出ユニット(1)の回路説明を参照してください。


警報検出回路

超音波検出ユニット(1)と違う部分は警報検出回路です。超音波検出ユニット(1)では規定時間内に対象物からの反射波がある場合に警報出力を出すようにしていました。今回の回路では逆に規定時間内に対象物からの反射波が無い場合に警報出力を出すようにしています。そのためには超音波検出ユニット(1)と同様に規定時間内での反射波の有無を検出します。555タイマーの時間設定等については超音波検出ユニット(1)の警報検出回路を参照してください。
ここでは反射波を検出した場合と、しない場合の回路動作について説明します。
   規定時間内に反射波を検出した場合


送信タイミングパルス(A)によりCは"L"に、DおよびFは"H"に、Dが"H"になることによりGは"L"にそれぞれ初期化されます。555タイマーの設定時間以内に反射波が検出されるとCは"H"になります。これによりEは"L"に変化します。Eが"L"になるとFは"L"になり、次の初期化まで保持されます。555タイマーがタイムアウトしてDが"L"になるとGが"H"になります。しかし、Fは"L"であるため、警報出力Hは"H"のままで、警報信号は出力されません。



規定時間内に反射波を検出しなかった場合


送信タイミングパルス(A)によりCは"L"に、DおよびFは"H"に、Dが"H"になることによりGは"L"にそれぞれ初期化されます。555タイマーの設定時間以内に反射波が検出されない場合には555タイマーのタイムアウト時点までEが"L"になることはありません。そのためFは"H"に保持されたままになります。555タイマーがタイムアウトしてDが"L"になるとGが"H"になります。Fは"H"に保持されているので、警報出力Hは"L"になり、警報信号が出力されることになります。
555タイマーのタイムアウト後に反射波を検出しても、すでにDが"L"になっているのでEは"H"のまま変化せず、警報出力が無くなることはありません。




警報検出初期化回路
警報検出回路にはNAND回路で構成されたSR-FF(セット・リセット型フリップフロップ回路)、555タイマーを使用しています。IC8で構成されている警報検出用のSR-FFの初期化はタイマーの立ち上がりのタイミングでリセットする必要があります。SR-FFのセットおよびリセットはLレベルで行うため、タイマーの出力が反転している信号を使い、信号の立ち下がりを利用しています。また、SR-FFのリセットはタイマー動作が開始されたときだけ行う必要があるため、CRタイプの微分回路を使用して、信号をパルス状にしています。D6はN2の入力に過電圧が加わらないようにするために入れています。タイマーがタイムアウトしたときN1の出力はLレベルからHレベルに変化します。C25には既に電源電圧の電荷が溜まっているので、D6が無い場合、この変化によりN2の入力に電源電圧の2倍の電圧がかかってしまいます。ダイオードの順方向電圧は1V以下ですので、N2の電圧は電源電圧+ダイオードの順方向電圧になるだけです。

初期化回路の悪い例

左の図は警報検出用のSR-FF(FF2)の初期化に送信パルスを使った場合の回路で、正常な初期化動作ができません。

なぜ、初期化動作が正常に行えないかをタイムチャートで説明します。


送信パルスの部分を拡大しています。信号の立ち下がり、立ち上がりを斜めの線で描いているのは立ち上がり、立ち下がりに時間がかかることを示しています。
問題は送信パルスが立ち下がって555タイマーをスタートしてもタイマーの出力がONになるまで多少の時間がかかるということです。NAND回路は高速で動作するのでFF2は送信パルスによりすぐにリセットされ信号(4)が立ち上がります。その結果、赤線で描いたように警報信号(5が短時間発生します。この時間が数マイクロ秒の短い時間ですが、警報信号が接続されている警報保持用の555タイマー(回路図参照)を動作させるのには十分な時間です。そのため、警報を出す必要が無いのに警報保持用の555タイマーが常に動作してしまいます。

そこで、今回の回路では555タイマーの立ち下がり信号(3)を利用してFF2を初期化し、初期化動作で警報信号が出ないようにしています。